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MORI LIVING Diary
過去と現在、そして未来を見つめるディン・Q・レ初の個展
October 02, 2015
7月下旬より森美術館で開催されている「ディン・Q・レ展:明日への記憶」。私も、先日ようやく見に行くことができたのですが、10月12日の閉幕までにみなさんにもぜひ足を運んでいただきたいと思う内容でした。事前にアーティストのことはよく知らずに行きましたが、様々な表現媒体を通じてベトナムの歴史や文化を表現した彼の作品には釘づけになりました。
最初の展示室では、写真を裁断してタペストリー状に編んだ作品に焦点が当てられています。これは、ベトナムの伝統的なゴザ編みから着想を得たものだそう。このタペストリーは、ベトナム戦争の写真と、ハリウッド映画など対照的な題材の写真を一緒に編み込んで作られています。ベトナムで生まれ、人生の大部分をアメリカで育ったディン・Q・レの二文化性が表れている興味深い作品です。
展覧会では、映像インスタレーション作品も見ることができます。いずれも見入ってしまう内容。一つはヘリコプターを題材にした映像で、戦時中のベトナムの人々のヘリコプターへの思いが語られるとともに、独自にヘリコプターを開発した農民の話も紹介されています。この他には、戦争の場面や兵士を描いたアーティストらを取り上げた映像、そして、共産党へ幻滅を抱きやがて党を離脱するアーティスト(トラン・トゥルン・ティン)を取り上げた映像も。この二作品に見られる対照性は印象的です。
ディン・Q・レの展覧会は歴史的・文化的な観点から学びの要素が多いとともに、私たちの社会の現在と未来について深く考えさせるきっかけを与えてくれます。みなさんも一度ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
ケリー